ネットでヒットしないので市内の六つの公立図書館を回って貸本漫画に関する本を探し回った。
しかし、ひばり書房『竜虎剣吹雪』成島一夫・作についての記事の書かれたものや作品を見つけ出すことはできなかった。
かろうじて『貸本マンガRETURNS』というポプラ社から出ている本の中の『貸本マンガ家リスト1000+α』という記事中に、成島一夫『悲願双竜剣』ひばりとの記述が見える。
其れだけである。
それ以外についてこの作家に関する記録は見当たらないので全く分からない。
成島一夫先生はひばり書房から最低でも『竜虎剣吹雪』『悲願双竜剣』の二作品を
発表していたことだけしかわからない。
しかも『悲願双竜剣』のほうは内容すらわからない。
ただ、竜と剣の二文字は両作品のタイトルに共通していることから、あくまでボクの想像なのだが、腕の立つライバル関係の二人の剣士の物語と思える。
『竜虎剣吹雪』が1957年発表作品であり当時は映画全盛期で邦画は時代劇が人気の主流であったことから、貸本マンガでも時代劇、チャンバラ物が大人気であったことは想像に難くない。
1955年( 昭和30年 )、横山光輝先生の貸本デビュー作『音無しの剣』が大阪の東光堂より発表されている。1956年( 昭和31年 )には『白竜剣士』が『少年』の4月号付録として。1957年( 昭和32年 )10月~1958年( 昭和33年 )8月には『少年クラブ』に甲賀忍者『風の天兵』を連載している。
余談ながら、この作品の中で阿魔野邪鬼として登場する剣客が後に『伊賀の影丸』では甲賀七人衆の首領として登場する。
また、藤子・F・不二雄先生の『山びこ剣士』『竹光一刀流』『海の快剣士』『電光豆剣士』『かげろう剣士』『宝さがし武勇伝』などが1956年( 昭和31年 )6月から1958年( 昭和33年 )9月までの『漫画王』別冊付録として発表されていることから当時の時代劇漫画ブームがうかがい知れる。
このように1955年( 昭和30年 )から1958年( 昭和33年 )にかけてが貸本漫画、月刊漫画雑誌における時代劇物の揺籃期であったと言えよう。
そんな中で、成島一夫先生の『竜虎剣吹雪』は、後の大売れっ子漫画家横山光輝先生、
藤子・F・不二雄先生たちの作品と比べて絵、ストーリ―共少しもそん色ない。
ボクは生まれて初めて手にした貸本漫画が『竜虎剣吹雪』であってよかったと思う。
構成もセリフもしっかりしている。加えて史実赤穂浪士事件をストーリーに組み込んできちんと描かれている。『竜虎剣吹雪』については機会があればぜひ読み返してみたいと思う。
また、今回調べていて判明した『悲願双竜剣』というまだ見ぬ作品についてもぜひ読んでみたい。