珍しく親方が褒めているシークエンスに出くわした。
これは親方が厚雅さんに向けて言った言葉だった。
「いい相撲じゃないか!」
「全身意識しないと、、、、、。」
そこから先はマイクが音を拾ってなくてよく聞こえなかったけど。
この時、厚雅さんは月岡雛大さんと取っていた。
月岡さんはその軽量を補うための動きの速さと技のキレには定評がある。
前さばきもうまいし変化もある。
が、この時は違った。
師匠が思わず声を出してしまうほどであった。
厚雅さんはしっかり腰を落として兄弟子を押し出した。
親方に褒められた後の一番もうまく右手のかいなを返して、
月岡さんを押し出した。
その時、厚雅さんはカッと両目を見開いて前方を見ていた。
ボクにはそれが頼もしく思えた。
取り口に執着したまじめな力士の姿だった。