昭和33年4月号の少年ブックに「風の天兵」と言う時代劇忍者マンガを連載しているが、横山光輝さんは、そこで初めて「阿魔野邪鬼」と言う片目の総髪の剣客を登場させている。
これが、後に週間少年サンデーの「伊賀の影丸」に登場する甲賀七人衆の頭目「阿魔野邪鬼」の原型である。

伊賀の影丸」では「阿魔野邪鬼」は不死身で年齢は二百歳とされている。剣、槍、半弓、乗馬の名人で武芸百般に秀でてはいるが、手裏剣を投げたり、高い塀の上にジャンプしたり、木から木へ飛び移ったりする外は、特に忍術と言うようなものは使わない。強いて言えば「不死身」こそが、邪鬼に取っての得意の術と言えよう。

さて、昭和33年4月号少年ブックに初出の「阿魔野邪鬼」であるが、忍者ではない。単なる凄腕の武芸者として描かれている。この作品のタイトルにもなっている「風の天兵」は甲賀忍者である。主君の仇討物語である。

後年の横山光輝さんの大ヒット作「伊賀の影丸」が公儀隠密で将軍家に絶対服従の命がけの宮仕えであることと似ている。
「阿魔野邪鬼」は当初、「風の天兵」で隻眼だったのが、「伊賀の影丸」では両目が見えるようになり、ほぼ、初出と同様の冷血無比のキャラクターのまま、「不死身」という能力を身に付け大活躍をするのである。

何しろ、「不死身」だから、何度殺されても生き返る。そういう、設定の下で、「伊賀の影丸」シリーズ中ではちょくちょく現れては影丸にちょっかいを出すが、決着せずにシリーズは終了する。だけど、当時のボクは、「不死身」の邪鬼見たさに少年サンデーを買い続けたと言っていいだろう。その邪鬼の初出本を見つけた。その時から61年が経過したから、「阿魔野邪鬼」は現在、261歳である。不死身だから。
ちなみに、「風の天兵」も、「伊賀の影丸」も不死身じゃないから、とっくに死んでいるに違いない。