若年層の感染者は相当な数だろう。高齢者層は履患から発症→死亡のスパンが短いだけだ。
母は永い永い潜伏期間を経て死に至ったが、自分の死因すら知らないはずだ。

長期間、たちの悪いウィルスの保菌者としてサナトリウムに隔離され、健康、基礎体力、内臓機能はますます低下した。

最終的に、陰湿で、排他的、厭世的、自虐的な性格となり、やたら虚言を弄するようになった。

親類のガン患者を見舞った時に相手に対し「あなたが入院していることは誰にも言わないから。」と母は言った。


サナトリウムにいた自分の記憶から出た言葉だったが、誰にも理解されず、皆の怒りをかった。


ボクは、若くして感染し保菌者となった母を長く軽蔑していた。結核の病歴を隠して父に嫁いだこと。サナトリウムや自宅での長い間の隔離生活から、我が身可愛いだけの性格になったこと。


しかし、ボクを身籠った時、堕胎しようと言った父に対し「どうか生ませて欲しい。きっと丈夫な子に育てます。」と言ったそうだ。
ボクはその事は父が亡くなる前に初めて父から聞いた。
お母さん、生んでくれてありがとう。
それと、どんな感染症でも若い人でも履患するし、時には命を落としたり、生きながらえても母のように死ぬまでシーパップを離せなくなる場合もある。みんな命を大切に!