バカ上司の取扱説明書 (SB新書)

頭取の娘むこが常務取締役になった。仕事のできない男だったが、田舎歌舞伎の女形みたいな容姿に惚れた頭取のバカ娘に言い寄られて結婚した。

バカな子ほど親は可愛いという。

バカな子と同様バカな頭取は個人商店でもないのに娘むこを重役にした。

 

 

バカなむこは常務就任の挨拶で己の無能を棚に上げ、昨今の業績低下の原因を各店の支店長のせいにした。

威圧的な大演説をした。

 

「ミツバチは蜜を集めてこそミツバチだ。お前らは何をしていたんだ!最近の大幅な業績ダウンはお前らのせいだ。蜜を集められんハチはハエと一緒や!お前らはハエや!」

 

 

ところが、因果応報。バカなむこ常務は大蔵省検査で大失策を犯し、平取締役に落とされ退職した。

その後、郊外の水族館の入場券のもぎりの係になった。妻子を連れて水族館に行った私の後輩銀行員が顔を合わせた。後輩は頭取のバカ婿と面識があった。目が合うなりバカ婿は、うなだれて入場券の半券を後輩の銀行員に渡した。

 

後輩は気の毒な気もしたがかつて自分たちをハエと言った人だから同情する気にはなれないと言った。