水木しげるのプレデビュー作『赤電話』について
貸本漫画集(4)恐怖の遊星魔人 他 (水木しげる漫画大全集)
水木 しげる
講談社コミッククリエイト
2015-05-01

元々、別の作家が描いていた100ページ以上の貸本漫画の後半40ページを作者が投げ出したので引き継いで完成させたものらしいです。元の作者を引き継いだと言っても、打ち合わせなく引き継いだのでストーリーは完結していますがタイトルとなった赤電話と内容の関連は全くありません。

野球の試合に例えるなら先発投手が打ち込まれて自滅した後、リリーフ投手が救援に立って何とか勝ちを拾った試合みたいなイメージです。先発投手は先に貸本漫画作家としてデビューしていたらしいですが、明らかにリリーフ投手の水木さんの方が技量は上です。

ストーリーは他愛のないものです。鉄人28号とか月光仮面に見られるパターンです。悪の組織と戦う少年探偵と刑事の兄が殺人事件を解決し、悪の組織の世界征服の野望を粉砕するというものです。
前半が謎の殺人事件で始まります。少年探偵が登場しストーリーが始まりますが、中盤、展開が進まなくなり先発投手も作者も続ける気を喪失してしまった感があります。

後半で俄然、絵がきれいになります。前半は、人物の走る姿や格闘シーンがめちゃくちゃです。極端に言うと、右手と右足が一緒に前に、左手と左足がそろって後ろにという。困難で絶対走れないという絵です。アマチュアっぽいタッチが見られます。主人公の顔が右向きと左向きで別人に見えるくらい下手です。

ここから水木さんがリリーフしたなと明らかにわかるページがあります。まあ、けなすばかりでなくそういうことが分かって楽しみながら読んでいるんですけどね。

同時に小林よしのりのゴーマニズム宣言コロナウィルス編を買ってしまいました。また、こっちの感想も書きます。