受験生の頃、本宮さんの「男一匹ガキ大将」が少年ジャンプで連載されていて読者に圧倒的人気を得ていた。他社に比べ新興の少年ジャンプ誌は若手で勢いのある作家を起用した。
ボクは最初、本宮ひろ志という新人作家の絵の下手さと行き当たりばったりみたいなストーリーに反発していた。
が、主人公の少年のセリフと熱量だけは刺激的で惹かれていった。いつしか、本宮さんの絵は安定してきれいになった。荒唐無稽なストーリーもこれこそ漫画の醍醐味と感じ始めた。そして毎週購読するようになり、大ファンとなった。
卒業時、本宮ひろ志さんに手紙を書いた。そのころには「硬派銀次郎」の連載が始まっていた。「男一匹ガキ大将」と「硬派銀次郎」の感想を書いたファンレターだった。
東京での学生生活は楽しいことばかりではなかった。学費と生活費を稼ぐためのアルバイトは辛いこともあった。だけど先生の漫画を読んでずいぶん励まされた。感謝しています。そんな内容の手紙だった。
卒業式が済んで寮を引き払う頃、本宮さんから郵便小包が届いた。開けてみるとTシャツが入っていた。「硬派銀次郎」のイラストの入ったやつ。そして、便せんに「いつも読んでくれてありがとう」と書かれていた。
ボクの学生生活は終わった。