突然の告知で狼狽している。1日に大動脈瘤の除去手術をすると言う。しかも、カテーテルではやらないという。


心臓僧帽弁膜症弁置換オペの失敗のことが頭をかすめてしまう。20××年10月15日のことだ。しかも、この手術ほ失敗だった。

術後、ボクは胸が苦しくなり、歩けなくなる。顔は土気色(つちけいろ)で、まるで死人のような顔色だったと言う。後に同僚にそう言われた。
 
通告されてから、14時間経過したが、動揺の幅が大きくなっているのを自覚する。

オペのリスクは、考えられるだけでも、麻酔、輸血、執刀医のオペミスなんかもある。現に九年前の1回めの心臓手術はミスだ。それを認めた若い医師は左遷された。

最後まで否認して逃げ回った医長は二度とボクに会おうとはしなかった。卑怯者でも2回目のオペの執刀医は彼だから、命の恩人だ。もう、ボクは彼を責めたりするつもりはない。

ただ、製薬会社からいろいろな饗応を受けるのはよくない。それもボクのオペに立ち会った若い医師から聞いた。


あと、オペ前の検査では、造影剤の投与ですら、病院はクランケから、念書を徴求する。つまり、医療ミスによる訴訟を逃れるためだ。


オペまで、四十日もない。
家の人の病気や商売のこと。次男の会社の試算表や、生前非課税相続の手続きなと、やることはたくさんある。

あと、青い鳥シンドロームの長男が金をせびりに来るのが、うっとおしい。完全に相続不適格なのだが、本人にはっきりと告げていない。これをどうするか?死ぬに死ねない。
 
 
おっと、辞世の句を詠んどかなきゃ。
 
「つらい事
楽しいことも
あったけど、
みんなのおかげ
ありがとう。」
 
変な句だな。
みんなもそう思う?
やっぱり。
 
 
ドクターに言われて、家の女に大動脈瘤除去手術でカテーテルのやつはリスクが大きいから切開して取り除くらしいと告げたら、
 
「あっそう。でも、入院前に、レッド・ロビンの剪定**だけはして行ってね。」
 
と言われた。 




**生垣用の庭木の枝葉をカットして整えてくれと言っている。