昭和32、3年頃の話だが、つげさんは貸本屋に勤める女性と同棲していたことがあったらしい。
暮しは楽でなく二人分の生活費を稼ぐため、生涯で最も多作だった時期と振り返る。
貧乏が続いて彼女の不貞行為が発覚する。
彼女を貧窮に巻き込んでいると思ったそれ以上追及できず、ただうなだれていた。
貧困が女性の心を歪ませるのはよくあることだとつげさんは女と別れた。
女との別れはさしてつらくはなかったが、いくら頑張っても生活の成り立たない貸本業界に失望した。
その頃発表されたのが名作「港のリリーちゃん」や「走れ!ぼろバス」である。貧しくても明るく一所懸命に生きる主人公たちが描かれている。
現実の苦しみから逃れたいと願いを込めて作品を描いていたのだろうか。