秋田書店刊の秋田文庫・横山光輝著「伊賀の影丸」第一巻「半蔵暗殺帳の巻」を再読。
「半蔵暗殺帳の巻」が「伊賀の影丸」のシリーズの第一巻に来ること自体、ボクは違和感を感じたが、よくよく考えてみると合点がいった。
小学館の少年サンデーでの連載順は、一番目が「若葉城の秘密」(これは謀反計画・宇都宮の吊り天井事件がモデル)、二番目が「由比正雪の巻」(これは歴史的にも有名で歌舞伎にも題材がある。)、そして三作目がフィクションだが「闇一族」。もっとも、地名や人物、団体のモデルはちゃんと存在している。地域は今の奈良県だし、一揆で領主と対立した人々も実在する。
話が逸れるところだった。「若葉城の秘密」、「由比正雪の巻」、「闇一族」と連載され、「半蔵暗殺帳の巻」はずっと後なのだ。
世間で一番人気のある「七つの影法師」(これは、薩摩藩の間者がモデル)よりも後のはずだ。
では、秋田書店はなぜ、連載順を無視したのだろう。答えはこうだ。つまり、出版社同士のバーター取引だ。秋田書店は少年チャンピオンで人気連載の「バビル二世」を小学館に渡し、小学館は少年サンデーで好評を博した「伊賀の影丸」の出版の権利を秋田書店に譲渡する。
そうして、出版社、装丁、大きさや表紙のカラーデザイン、紙質などなどに変化をつけて、再出版、再々出版を繰り返す。やがて、ほんの売れ行きが低下したころには、また次の出版社、講談社とか集英社とか、とバーター取引をすると、こういう訳だ。
本が売れると作者だって印税が入るから文句は無い訳だ。すまん、この話、実は裏を取ってない。(取ってねえんかいっ‼)今から、友人の漫画家、編集者に裏を取る。(おそっ~。)
で、平成七年の初版・秋田書店文庫・横山光輝著「伊賀の影丸」第一巻「半蔵暗殺帳の巻」のラストシークエンスなのだけど、326ページ寒月斎から巻物を奪い返して、伊賀地獄谷忍軍と五代目服部半蔵正吉(五代目は徳川将軍家の文官でもう、忍者の統領ではないとの説が有力。だから、影丸の師匠でも上司でもないはずだけど。いいんだ。そんなのはッ。フィクションだから。)の配下とともに去っていく影丸が振り返って、寒月斎の死体を無言で見つめるシークエンスは、少年サンデー連載中、「半蔵暗殺帳の巻」ラストにはなかった。
約五十年の時をへて描き替えられた絵である。何のためにそうしたのか?編集者の意向か?作者がそう願ったのか?雑誌の広告が抜けたためか?その辺の事情はボクにはわからない。友人の漫画家兼編集者に尋ねてみたい。