網膜剥離の手術は終わった。もちろん成功した。その後、ボクは何の不自由もしなかった。
これは、手術後の余談だけど、この時、ボクは右目は眼帯だし、左目も弱視乱視でぼんやりとしか見えない。なのに、担当のナースがたいへんな美人だったらしい。
付き添った家の女が、最初に、
「すっごいキレイな子!お父さん、残念やね。目がみえなくて。好きなタイプなのに。」
と言った。
次に、当時、調布のにっかつの撮影所から、見舞いに駆けつけた伜が、「女優みたいだ。」と感想を言った。
それから、会社の同僚らが、毎日、ひっきりなしに、入れ替わり立ち替わり現れた。
うっとおしくなったボクは担当ナースを替えてと頼んだ。婦長におバカな同僚が仕事もせずに病室で騒ぐので困っていると話した。
婦長推薦のナースは、何でも手際よくこなすし、気遣いもうまいベテランだった。
彼女に交代した日から、同僚のおバカどもはピタリと来なくなった。ベテランナースが彼らに来るなと言った訳じゃない。
前任者と少しだけ異なるタイプだった。
体重は80kg超のヘビー級で武蔵丸関に似ていた。