大相撲の巡業、春は関東圏中心、夏は東北北海道、秋は関西中四国、冬は九州沖縄と全国を回る。
秋の巡業を覗いて来た。

若貴時代、それも若花田、貴花田の時代によく巡業の追っかけをしていた。
そのころは本場所はもちろん、地方巡業でも何とも言えない緊張感があった。
ある時、十両貴花田関が稽古中、当時の付け人の五剣山さんのほっぺたを
平手で打った。
ぱちんと大きな音が稽古場に響いた。
貴花田関が五剣山さんを咎めたように見えたが会話の内容は分からない。
しかし五剣山さんは「ごっつぁんです!」と大きな声で言った。
厳しい世界だなあと思った。

当時、若貴フィーバーと言って若貴兄弟はマスコミの人気者であった。
特に弟の貴花田関は早くから将来の横綱候補としてもてはやされていた。
その貴花田関が後援会やマスコミに公開の場所で付け人に平手打ちの制裁を加えたのだ。

後からボクは、同郷の五剣山関(その後何場所か十両を務めた。)から直接聞いたのだが彼は、
一歳上の貴花田関から付け人としてずいぶん信頼されていたらしい。
五剣山関も関取をずいぶん尊敬していたようだ。

今ならパワハラとか暴力と言われそうな貴花田関の平手打ちは、誤解のないように言うと
よい意味での緊張感を表していたのかもしれない。

最近、貴闘力さんに元貴乃花親方が「今の力士は何故こんなに弱くなっているのか。」
と尋ねたという。
以前のように緊張感のないことが全体の力士を弱体化しているように見せているのかもしれない。

そういうわけで今日、巡業を見てきたが全体的に明るく楽しい大相撲に務めているようで
とても緊張感は感じられなかった。
でも明日、明後日と巡業は続き、九州場所へと繋がっていくわけだから
けがをしてもいけないし、けがをさせてもいけない。
逆に緊張感のない相撲をとっていると危険な場合もある。
まるで初っ切りのような取り組みが多かったことも事実であった。


今日、会場についてすぐ狼雅関と颯雅さんに会えた。その後稽古前にも取組前にも何回か会えた。
颯雅さんは狼雅関の付け人だから当然二人はいつも一緒にいるわけだ。
狼雅関は誰にでもフレンドリーに笑顔で接していた。サインも握手も写真撮影も力士の中で一番
人気があったと言っていい。取組前の通路以外ではほとんどファンに囲まれていた。
颯雅さんは疲れ切っていた。ロビーでも通路でも油断するとすぐ狼雅関の回りに人垣ができてしまい
颯雅さんは常に何か荷物を持って関取から離れて立っていた。取組も三段目の最初の取り組みで
負けた。狼雅関は熱戦の末、欧勝馬関に破れた。敗れはしたものの、狼雅関も颯雅さんも
緊張感のある良い取り組みだった。けがせずこの巡業を終えて九州場所でも、活躍してほしい。
今度はテレビ中継で応援する。