銀行

次に潰れるのはどの銀行だ⁉

 銀行倒産 ドキュメント金融恐慌 (講談社文庫)

他例え話で、よくイギリスでは、普通銀行の行員は社会の底辺から2番目の職業と言われる。シアターの下足番より、地位が低い。

人の金を出し入れする仕事なんか、金を預かるだけで、なんの利益も与えてくれない。つまり、ブーツやコートを預かるだけと何ら変わりないというわけだ。0に近い預金利息も良くないけど。


ボクの田舎に不祥事続きの地方銀行がある。最近になっていた。やっと投資銀行として顧客貢献に目覚めたようなことを言い出した。顧客の資産運用に貢献しようと言う意識に目覚めたと言っている。
そして、営業戦略を変更した。と言うふうなことをテレビCMで言い出した。

しかし、騙されてはいけない。経営者は十五年も同一人物だし、店舗数も人員構成も商品の品揃えも変わらない。
人体に例えるなら、動脈硬化の末期症状だ。時代遅れの不適格なトップは、座して死を待つより、自ら辞して、組織の命を救うべきだ。無能なトップと無力な経営陣が交替すれば、生き残る術は、まだあるはずだ。

この銀行が投資銀行に変わる前に亡くなる可能性をボクは心配する。

 

日テレの花咲舞に登場した悪代官みたいな支店長

花咲舞が黙ってない Blu-ray BOX

日本テレビ系「花咲舞が黙ってない」の第九話「消えた約束手形一千万円の話」を見た。

あれ? 似たような話が?・・・と、ついつい思い出すのは、以前、ボクが書いた「<星の降る町で100万円の手形をなくした話> 。これとプロットは一緒だと思った。

さて、「花咲舞」だ。ストーリーは途中から男女の話になって行くので別の話と気づく。

実は、手形をテーマにした映画や小説は意外と多い。手形法や手形交換所規則等、たくさんの約束事を知らないと扱いにくいし、思わぬ権利の落とし穴に入って、正当の権利者が権利を行使できない点はなかなか理解しにくい。また、手形事件ドラマには複数の関係者(振出人、支払人、受取人、割引人、非合法だがサルベージ屋、パクり屋、等々)が登場する。

そして、登場人物たちが、丁々発止、有りったけの知力、能力を駆使して手形の権利を争う。

古くは高木彬光の「白昼の死角」が出色の長編小説だ。「手形と簿記は人類が作った最も美しい経済上の作品」とゲーテが呟いたのもわかる。

今回のヒール(悪役)は東京第一銀行三鷹支店長・野口を演じた俳優の佐戸井けん太さんだ。

わざと「佐戸井けん太さん」と言わないとこの俳優に騙されそうだ。リアルに、三鷹地方銀行に行くとこんな嫌な支店長がいて部下を虐めているに違いないと錯覚する。

大事件発生にも関わらず、対策はそっちのけ、自己保身と責任転嫁に終始。「お言葉を返すようですが!」と舞の怒りは爆発する。現実にはこの手の管理者がほとんどだから、佐戸井さんの演技は完璧である。

拙稿「<星の降る町で100万円の手形をなくした話>は事実なのだが、あの事件を解決した青年支店長は部下を一度も叱責しなかった。ひたすら、事件解決にのみ全人格、全能力を注力した。後年、ボクが尋ねると、既にその地銀の役員になっていた彼はこう言った。

 「早く解決してお客と部下を安心させたい。それしか頭に無かった。」

ドラマでもリアルでも悪代官みたいな支店長がほとんどだが、稀には尊敬できる支店長もいる。

銀行のバカ殿と提灯持ち重役

民事執行法を知らない頭取と反社とつるむ重役

銀行不祥事の落とし穴 

 

一、民事執行法の意味を知らなかった頭取

 

当時の民事執行法の決まりとしては、後順位の根抵当権者が競売申し立てをしたとしても、競売落札の結果として、その後順位抵当権者に競売配当が為されないのであれば、後順位者が納めた競売申し立て費用は取られ損で、先順位抵当権者は競売費用を一円も納めずに債権の回収が可能というものだった。

 

もっとわかりやすく言うなら、一番抵当のが人五千万円貸していて、抵当に入っている不動産に五千万円の価値しかなくて、競りで第三者が五千万円で落としてくれたとしたら、二番抵当の人は受取金(配当)は0円だよね。二番抵当の金額がいくらであっても。前の人が全額、もってっちゃったんだから、取り分はないよね。

5000万円-5000万円=0円

つまり、国(裁判所)は、自分に利益がないのに、憂さ晴らしみたいに競売申し立てしても、競売申し立て費用は返さないよと言うてんや。

 

そんなら、一番抵当のが人四千万円貸していて、抵当に入っている不動産に五千万円の価値しかなくて、競りでよそのおっさんが五千万円で落としてくれたとしたら、二番抵当の人は一千万円は受け取れるよね。この場合は二番抵当の金額が最低一千万円ないと取れないけどね。

 

 

ボクはかつて、勤務先金融機関が次順位(二番抵当権者)だったのに、そういう失敗を実際にやってしまった。もちろん、取り分がゼロとは思わんかったけどな。借金踏み倒して居直るやつは許せなかったし、対応の遅い一番抵当権者の地方銀行の態度にも腹を立てていた。

 

この時の債権額からして印紙代や郵便代、裁判所に納めた申し立て費用は五十万円を超えていた。その金はもちろんボクの勤務先の金融機関が負担した。

 

民事執行法の手続き手順と決まりごとに乗っ取って裁判所に申し立てをし、債権者である立場の勤務していた金融機関の頭取印を裁判所に申し立てる書類に押すべく、稟議書を融資部長宛てに出して、頭取もそれを決裁したうえで夜逃げした債務者の不動産を競りにかけた。

 

ところが、上記のような結果が出たとたん、ボクは勤務先に不利益を与えたとして、懲罰処分を食らった。

おまけに退職する時に、頭取は、ボクに向かって、

「 お前は、若い時から、注意不足で勇み足ばかりだった。」と言った。

 

手柄はすべて自分のもの、落ち度はすべて部下のせいの典型のもとバカ上司のこの男は後に人材が全くいない田舎銀行の頭取になった。

 

民事執行法ってなんや?民事再生法なら知っとるけど。」

 

これもこのバカ頭取がボクに吐いた言葉だ。まったく、

 

「 バカはどこにでもいる。」

 

というが、身近にこんなバカがいるとは思わなかった。

 

 

 

      二、自ら反社取引でノルマを稼いだバカ重役

 

金融庁通達が発出されて「反社勢力に新規口座を作らせるな。」となった時に警察庁の指導もあり日本全国の金融機関が一斉に反社会的勢力の法人個人及びその関連先企業舎弟をシャットアウトした。ボクは個人的には見聞きしていないが、これには抜け道があったのではないかと思っている。反社会的勢力に魂を売った弁護士が、反社と、つるめば、口座開設は可能だ。手口は開示しない。マネする悪党がいるからだ。

 

肝心なのは、ここからだ。以後、反社に口座開設はさせないというものだが、過去から存在する反社の口座はどうするのだ。過去から存在する反社の口座は、ボクは見聞きしたことがある。

反社の口座を作るに当たって、反社会的勢力の自宅や事務所に自ら出向いて口座開設依頼書に署名押印させる、時に代筆する、取引印鑑は銀行員が印判店に出向き購入する。上記はすべて違法行為なのだが、そうやって反社の口座開設に自ら進んで協力した銀行員がいるらしい。

 

そして、それらの口座を利用して、違法薬物や闇金、特殊詐欺電話行為、などの犯罪行為によって反社が稼ぎ出した金の資金洗浄やプールに利用されているという事実。これらの既往の反社の口座を凍結しなければ、反社は生き残ることが可能だ。

 

そういうことに関与したかつての営業担当が金融機関の代表者や役員として未だに組織内で堂々と生きていることが不思議だ。

襟を正して生きろ。上に立つものは法も正義も厳守しろ。少しでもやましい所があるならば即刻辞任しろ。それがボクの考えだ。

銀行の話④〈顧客への尊敬を忘れた傲慢な銀行員の末路〉


銀行さん、もう、毎月1万円しか返せません


ボクが支店勤務の銀行員時代の話だ。ボクは長期延滞中の融資先を十指に余るほど抱えていたが、ある時、「網膜剥離」の診断を受け、止むを得ず、入院のために休職することとなった。引き継ぎ事項、懸案事項をノートに書き出して病院へ向かった。

当時、担当顧客の中に老舗のある建材販売会社Bがあった。そのB社と筆者の勤務先とは二十年の融資取引があった。ボクが勤務していた支店が当地に開店して以来の得意先で小規模企業ながら、好景気不景気を問わず、永年、借入金利を払い続けて来てくれた大切な顧客である。

その法人には所有不動産がなく、社長の自宅も他の銀行の一番抵当に入っているため、B社への融資は信用保証協会の保証付き融資で取り組んでいた。担保や保証人のない企業が保証協会に保証料を支払い銀行からの融資を受ける。

もし、企業が借入金の返済不能に陥った場合は銀行は保証協会から債務者に代位して弁済を受ける。債権は銀行から保証協会に移り、協会は以後、債権者となって債務者である企業に返済を求めて行くことになるわけだ。


さて、ボクは入院に当たってB社の借入金をリスケジュール(返済しやすいプランに組み換えること)しようという保証協会宛の計画書を作成していた。しかし、後任の融資課長はそれを中止し、「返済能力無し」として保証協会宛ての代位弁済請求をかけてしまった。 

その間、B社の社長の返済計画や弁明には一切聞く耳を持たず、たった一度だけ電話で督促し、電話の日から3日後を最終返済期限に指定した内容証明郵便を送り付け有無を言わさず、債権を保証協会に移行してしまった。

のちにボクは、B社の社長から、

・「銀行に騙し討ちにされた」
・「我が社に向かって倒産しろと言っているのも同然だ。」
・「うちは、銀行から保証協会に売り飛ばされた会社だ。」

・・・等と、自虐的な恨み言を聞かされた。

ボクは、後任の融資課長に、何故弁明の機会も再建のチャンスも与えず、B社を追い込むような真似をしたのかと、さすがに半ば険悪に問いただした。

すると後任の融資課長は、

 「あなたのようなやり方では、延滞債権がますます、増加する。不良債権はどんどん切り捨てて行く方針だ」

と主張した。しかし、数年後、銀行員である彼自身が自ら勤務先の銀行から借入した住宅ローンの返済不能に陥り、マイホームを手放すことになってしまった。それは、彼自身が「不良債権はどんどん切り捨てて行く」と言う債務者への思いやりを忘れた傲慢さがあったことの因果のように思えてならない。

銀行の話③< 倒産の現場 >

倒産の前兆 30社の悲劇に学ぶ失敗の法則 (SB新書)



ボクがまだ銀行員だった時のことだ。ある倒産事件を思い出して胸が痛くなることがある。

通常、銀行員が倒産の現場に出向いたところで得るものは何もない。苛立った債権者の群れに混じっても、ろくな目にあわない。銀行員は場馴れしていないため、黙っていても必ず周りに正体が知られてしまう。

そして、素人債権者や下請け、従業員たちに囲まれて社長の個人預金はわしらの未払い代金として現金で持って来いと怒鳴られたりすることがある。

たとえ銀行に倒産企業の口座が残っていて、何十万円かの預金があったとしても、何千倍かの回収できない貸出金があるとすれば、銀行こそが不幸な最大の債権者だと言う考え方は否定されなくても良いはずだ。

正式の債権者集会でさえ、銀行だけが一番や二番の上位に抵当権を付けて、借り手が倒産するとすぐ差し押さえ競売を申し立て、涼しい顔して貸金回収をする。そんなふうに思われている。

事実、ボクも銀行員時代は罵声を浴びせられたこともある。しかし、これは見当違いの八つ当りもいいところだ。一般債権者が妬むほどのガチガチの保全主義は、そうでもしなければ、他には何ら強力な貸出金の回収手段やノウハウを持たない銀行にとっては無理からぬことなのである。


では、何ら「担保」「保証」を持たない「信用貸出」の先が倒産したら、銀行はどうやって債権回収をするのだろうか。

「バルク・セル」と言って債権買い取り会社に債権残高に比して、ほとんど二束三文に近い値段で「叩き売り」するのである。

だから、臆病な銀行にとって、信用貸付はレア・ケースである。経営者の人柄や企業の将来を信じて担保も保証人も付けずに貸し出すことはほとんどあり得ない。


しかし、ボクはかつて、例外的に一部上場家電会社の部品製造下請け会社に対して1億円の短期融資案件を実行したことがある。ところが、1億円の融資時点ではN社の資金繰りは破綻していたのだ。


1回目の不渡りを知ったボクは、N社を訪問した。すると既に事務所は債権者で溢れ返っていた。反社会的勢力とおぼしき連中に両側を固められたN社の社長が、社屋から玄関前に停車された黒い大型車に乗せられようとしていた。

社長と目が合ったので、思わず

「社長! ギブアップするの?」

とボクが問いかけると、反社の若い衆が

「こら! 何じゃ、われ! 帰れ!」

と恫喝してきた。そしてそのまま社長を乗せた反社の車は走り去った。


未回収確定の1億円の貸出金、自分に対する懲罰処分、そんな些末な不安より、N社の社長に裏切られたと言う感情がボクを責め苛んだ。

社長が連れ去られた後、N社の駐車場に集まった債権者に向かって呼び掛ける怪しげな事件屋の声がいつまでも響いていた。

「債権買うよ~。手持ちの請求書だけでもいいよ。債権額の5%から10分の1で!」

倒産の現場には、債権者と債務者、そして怒りと悲しみしかない。

銀行の話② <不渡り手形と消えた振出人>

世の中には、人を騙して金儲けを企む悪人がいる。

詐欺師の事だが、民法の考え方では「詐欺は騙される方にも落ち度がある」というのがある。民法が受験科目の資格試験である「宅地建物取引士試験」や「行政書士試験」にはよく出題される。

例えば、「脅迫」と「詐欺」によって不動産を第三者名義にされた時に被害者(元の持ち主)の権利をどう守るかというふうに出題される。この答えは「脅迫」の場合は全面的に被害者の権利が守られるが、「詐欺」の場合は「善意の第三者に対しては対抗できない」としている。

つまり「詐欺とは知らずに詐欺師や詐欺師から不動産を購入した者からさらに転売された人」の方が詐欺師に騙された人より気の毒だから守ってあげようという考え方だ。

権利がぶつかり合った時、より気の毒な方の味方をするというわけだ。詐欺師に騙されるあんたにも落ち度があるでしょうという考えだ。ボクはこの考え方には納得いかない部分があるが、それこそ専門家が幾星霜かかって築き上げた法理論だから、文句は言うまい。

ただし、詐欺師は悪党だ。絶対、罰せられるべきだ。

ボクの銀行勤務時代の話だが、若い頃、営業担当者として退職一時金を預金にお預かりしたことから贔屓になってくれたお客がいた。彼は、地方のマスコミに永年勤務した人だった。紳士で退職時には社内でも相当な地位にいた人だった。報道機関にいながら事件現場や取材活動の経験はなく、反面、企業のオーガナイザーとして辣腕を振るった人物だと後から知った。

その人が、所有する市内一等地の遊休不動産を売った。自宅は郊外にあった。不動産取引後、彼は土地売却代金を全額預金すると電話をしてきた。訪問してボクは奇異な感じがした。

土地代現金5000万円と、3通の約束手形、内訳は2000万円2通と1000万円1通。しかも、手形の期間は6ヶ月、9ヶ月、1ヶ年だ。聞けば買い手は市内不動産屋某で「金額が1億円なので半金半手にしてください」と言われてキャッシュ5000万円、手形5000万円を持ちかえったそうだ。

「半金半手」とは、半分を現金(振込)で、残り半分を手形で支払うという支払方法のことだ。

不動産取引で半金半手なんか聞いたことがない。半年から1年の手形なんか、詐欺師が土地を転売して逃亡するのに十分だ。ボクはすぐに弁護士さんに相談して手を打ちましょうと提案した。彼は6ヶ月様子を見ようと言った。それは甘いとボクは思ったが彼には思惑がありそうだった。

果たして6ヶ月後、2000万円の約束手形は無事落ちた。しかし、案の定、残りの2通はやはり不渡り手形で返却された。付箋の付いた手形を筆者に示し彼は言った。

 「私はあの土地は元々、5000万円以下の値打ちしかないと思っている。前の道は二項道路(建築基準法42条第2項に規定される狭い道の事。この道に面すると建築制限が付くので土地の価値は低い)だし、他の業者に聞いても5000万円はしないと言うことだった。 


彼は、一息ついて驚くべき事を言った。

 「実は、あの不動産屋の某は私の小中学校時分からの友人だった。彼が何故今回こんな手の込んだ事をしたのか、私には分からない。彼にどんなバックが付いていて彼にどんなメリットがあるのか興味もない。ただ、私は遊休土地の固定資産税を納めるのが面倒だったし、あいつ(不動産屋某)の役に立てばそれでいい」


ボクは違和感を覚えたものの、彼に被害者意識がない事が救いだった。
しかし、不動産屋某は2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分となる前にこの町から姿を消した。
行方は知れない。

不渡り理由は「資金不足」だった

銀行の話①<宅建を取っては見たけれど>

同期が過労死した。まだ、29歳だった。

大学ではラグビー部にいた。人一倍頑丈な身体をしていたはずの男がなんで、こんな目に合うのだ。
結婚して数年で、女の子と男の子が一人ずついた。訃報の少し前に、同じように幼子を連れた彼の家族とボクの家族が偶然、ぬいぐるみショーの会場であったばかりだった。


支店長によると、同期の彼は昼間は金利引き下げを受けて法人や駆け込み預金のお客の家を休む間もなく訪問し続け、夜は利下げ後に一気に提出する融資案件の構成のため職場で、半徹夜 が続いていたそうだ。

同期の出世頭で、同期の飲み会ではいつも中心にいた。年代を越えたゴルフコンペでもいつも上位だった。スポーツマンで話題豊富で周りを和ませたので、役員や上司、先輩、お客にも人気があった。


残業続きの明けで支店長主宰の接待ゴルフの打ち上げで、表彰式の司会中にマイクで話していてドスンと仰向けに倒れた。
彼がふざけていると勘違いした支店長が、

「おい、君。ふざけるのはやめたまえ。」

と言ったが、身体は、もうすでに動かなくなっていた。

救急車で運ばれた病院で心不全と診断された。




ボクは、彼を死なせたのは支店長であり、銀行だと思う。明るく、スポーツマンに見えた彼だが、生前、ボクには悩みを打ち明けた事がある。

ちょうど、ボクが、大阪の支店に転勤する前のことだ。もう、しばらくは会えないかも知れないと彼は電話で告げ、ボクを屋台の一杯飲み屋に誘った。



「大阪転勤、よかったな。お前は頭がいいから、出世するだろうな。俺の分まで頑張ってくれ。」

ボクは驚いた。彼こそは同期の出世頭で文武両道と思っていたその本人の口から、そんな言葉が出るとは夢にも思わなかった。

「俺は、そろそろ、この銀行を辞めようと思う。仕事はきついし、家族のもとにも帰れない。日曜は日曜で嫌な支店長のちょうちん持ちで、接待ゴルフだ、宴会だと、召使い扱いだ。

銀行に入って、覚えたのはノルマの消化方法と『預担*』くらい。

決算書の分析もできないし、商業科出て入行した後輩の女子行員の方がまだ、ましだ。」



やけに厭世的な彼の言葉が最後の会話となろうとは、ボクは夢にも思わなかった。

「辞めてどうする。」

「親戚が田舎で小さな不動産屋をやっている。跡継ぎもいないし、そこに行くつもりだ。」

それから、彼は亡くなった。


告別式に間に合わなかったボクは、彼と特に仲の良かった二年先輩の人と一緒に彼の実家に向かった。



同期の両親の悲しみ様は見ていて気の毒で哀れで僕と先輩は滞在中、ずっと涙が止まらなかった。

線香をあげてお香典を供え、お悔やみを申し上げると父親が息子のことを話し始めた。


「息子は、かねがね言っていました。自分は銀行員は務まらない。残業で身体を壊しそうだし、寝不足で運転中、何回も事故を起こしそうになった。ノルマができないと、人格を否定されるように罵倒されるし、給料もいつまでたっても増えない。

接待ゴルフだ飲み会だと上司にいいように振り回されて、肝心の銀行業務や決算帳簿、外国為替、融資案件の取り組み方法については何も指導してくれない。質問しても自分で勉強して身につけろと突き放される。

そして、なにより、仕事に生きがいも熱意も持てない。健康状態も限界だし、精神的にも参っていると。」


母親が言葉をつないだ。

「先週、あの子から電話がありました。叔父の不動産会社に入れさせてほしいから、話を通してくれというものでした。銀行はどうすると聞いたら、来週にでも退職届を出すのだと。もう決心したからと言っていました。」


そして父親はボクらに言った。

「私の兄弟が不動産屋をやっていまして、息子は空いた時間で不動産の免許を取る勉強をやっていました。息子と仲良くしてくださったあなた達に形見と言って何もないのですが、この不動産の資格試験の本をもらってやってください。

それから、息子のように過労で職場のせいで命を縮める人が出ないような会社にしてください。」


先輩とボクはありがたくご両親のご意思をいただいた。先輩は参考書をボクは問題集をもらった。
同期の家を辞して後、先輩が僕に言った。

「お前、あいつと親友だったんだから、これで勉強して。、いつか宅建取ってやれ。」


先輩はもらったばかりの参考書もボクに押し付けた。

「いやですよ。俺、不動産に興味ないし、頭悪いし。ムリムリ。」

「いや、亡くなったあいつは同期の中じゃお前が一番頭いいと言ってた。すまんが、お前、いつでもいいから、それがあいつの供養だから、弔い合戦と思って、宅建取ってやってくれ。」


先輩は調子のいいことを言って、すべての責任をボクに負わせた。ボクは仕方なく勉強を始めた。

それでも、相変わらず、銀行のノルマやバカな勤務体系は変わらずボクらにのしかかってきた。あんまり、たびたび、不合格が続いて受験をあきらめた年もあった。

合格まで年月がかかりすぎて同期の受験しようとしていた資格は「宅地建物取引主任者」から、「宅地建物取引士」と名称が変わった。

やっと合格した時にはボクは中年を過ぎていた。合格して間もなくボクは銀行を退職した。




  *預担=預金担保貸付
     預金を担保として拘束し貸し付ける融資方法
     融資は、預担に始まり、預担に終わるともいう。
     単純預担もあるが、預金者と借入人が異なる場合など権利関係が複雑になることもある。

     同期が預担は簡単と言ったのは手続きは単純だというほどの意味でした。

⑲『集団左遷‼』感想〈 脇の甘い支店長の福山雅治 〉 

 

今回は偽の不動産融資の手口に引っかかった支店長役の福山さん。まさに、取引の当日に気づいた副支店長の香川照之さんの機転によって被害を未然に防ぐことができたという筋立てながら、見ていて疑問に思ったところが三点。


先ず一点目、いくら一流企業からの注文とは言え、裏を取らずに融資を決断するという点が変だ。支店長の独断で、調査もそこそこに、相手のいいなりで、融資予約をしているようなもの、日本全国、どこの銀行、はおろか、信用金庫を探したって、こんな脇の甘い支店長はいないと思う。


二点目、詐欺師が、正体がばれた瞬間に土地代金の印字された銀行振出小切手をつかんで逃げ出そうとする。すると銀行員が飛び掛かって詐欺師に追いすがる。
ここまでは良い。あとのセリフがおかしい。小切手を渡さないぞ、死んでもこの手を放さないかなんか言って顔を蹴られて鼻血を出している。
相手を捕まえようとしたのならわかるが、現金ならまだしも銀行の振出小切手なんか、取られたって痛くもかゆくもない。出金禁止をかけて、事故小切手にするだけですむはずだ。また、そんな詐取した盗難小切手を取り立てに回すバカな犯人はいないはずだ。足がつくだけだ。怪我させられてまで、小切手を取り返す必要はない。


三点目蒲田支店が配転になるという週刊誌の記事を読んだ近隣住民が大挙して押し寄せ、

「この支店が閉鎖されたら我々の生活に影響する。みんなで預金して支援するから、何とかこの支店を廃店にしないようにお願いする。」

という意味のことを言う。

5、60年前の銀行ならともかく、現代の顧客はこういう考えはない。銀行の三大業務は、預金と為替と融資。あと、しいて言えば公共料金の口座振替くらいだが三大業務はすべてネットで間に合うし、公共料金だって近くのコンビニ決済で事足りる。借入金利をただにしてくれるというなら、別だが今は銀行の支店が近所になくても誰も困らない。



とここまで書いて思い出したのだが、江波戸哲夫先生の書いた原作本は、ずいぶん昔のもので、池井戸潤さんの半沢直樹シリーズや花咲舞シリーズより、ずっと古いのだ。

それを下敷きにテレビドラマにした以上、この展開は仕方ない。その点を考えながら、大好きな福山雅治さんの銀行支店長役の演技だけを見れば結構楽しんで見られる。

⑱〈 ボクが宅建を取った訳 〉過労死した親友



同期が過労死した。まだ、29歳だった。

大学ではラグビー部にいた。人一倍頑丈な身体をしていたはずの男がなんで、こんな目に合うのだ。
結婚して数年で、女の子と男の子が一人ずついた。訃報の少し前に、同じように幼子を連れた彼の家族とボクの家族が偶然、ぬいぐるみショーの会場であったばかりだった。

支店長によると、同期の彼は昼間は金利引き下げを受けて法人や駆け込み預金のお客の家を休む間もなく訪問し続け、夜は利下げ後に一気に提出する融資案件の構成のため職場で、半徹夜 が続いていたそうだ。

同期の出世頭で、同期の飲み会ではいつも中心にいた。年代を越えたゴルフコンペでもいつも上位だった。スポーツマンで話題豊富で周りを和ませたので、役員や上司、先輩、お客にも人気があった。

残業続きの明けで支店長主宰の接待ゴルフの打ち上げで、表彰式の司会中にマイクで話していてドスンと仰向けに倒れた。
彼がふざけていると勘違いした支店長が、「おい、君。ふざけるのはやめたまえ。」と言ったが、身体は、もうすでに動かなくなっていた。

救急車で運ばれた病院で心不全と診断された。


ボクは、彼を死なせたのは支店長であり、銀行だと思う。明るく、スポーツマンに見えた彼だが、生前、ボクには悩みを打ち明けた事がある。

ちょうど、ボクが、大阪の支店に転勤する前のことだ。もう、しばらくは会えないかも知れないと彼は電話で告げ、ボクを屋台の一杯飲み屋に誘った。


「大阪転勤、よかったな。お前は頭がいいから、出世するだろうな。俺の分まで頑張ってくれ。」

ボクは驚いた。彼こそは同期の出世頭で文武両道と思っていたその本人の口から、そんな言葉が出るとは夢にも思わなかった。

「俺は、そろそろ、この銀行を辞めようと思う。仕事はきついし、家族のもとにも帰れない。日曜は日曜で嫌な支店長のちょうちん持ちで、接待ゴルフだ、宴会だと、召使い扱いだ。
銀行に入って、覚えたのはノルマの消化方法と『預担*』くらい。決算書の分析もできないし、商業科出て入行した後輩の女子行員の方がまだましだ。」


やけに厭世的な彼の言葉が最後の会話となろうとは、ボクは夢にも思わなかった。

「辞めてどうする。」

「親戚が田舎で小さな不動産屋をやっている。跡継ぎもいないし、そこに行くつもりだ。」

それから、彼は亡くなった。


告別式に間に合わなかったむボクは、彼と特に仲の良かった二年先輩の人と彼の実家に向かった。


同期の両親の悲しみ様は見ていて気の毒で哀れで僕と先輩は滞在中、ずっと涙が止まらなかった。

線香をあげてお香典を供えお悔やみを申し上げると父親が息子のことを話し始めた。

「息子は、かねがね言っていました。自分は銀行員は務まらない。残業で身体を壊しそうだし、寝不足で運転中、何回も事故を起こしそうになった。ノルマができないと、人格を否定されるように罵倒されるし、給料もいつまでたっても増えない。
接待ゴルフだ飲み会だと上司にいいように振り回されて、肝心の銀行業務や決算帳簿、外国為替、融資案件の取り組み方法については何も指導してくれない。質問しても自分で勉強して身につけろと突き放される。そして、なにより、仕事に生きがいも熱意も持てない。健康状態も限界だし、精神的にも参っていると。」

母親が言葉をつないだ。

「先週、あの子から電話がありました。叔父の不動産会社に入れさせてほしいから、話を通してくれというものでした。銀行はどうすると聞いたら、来週にでも退職届を出すのだと。もう決心したからと言っていました。」

そして父親はボクらに言った。

「私の兄弟が不動産屋をやっていまして、息子は空いた時間で不動産の免許を取る勉強をやっていました。息子と仲良くしてくださったあなた達に形見と言って何もないのですが、この不動産の資格試験の本をもらってやってください。それから、息子のように過労で職場のせいで命を縮める人が出ないような会社にしてください。」

先輩とボクはありがたくご両親のご意思をいただいた。先輩は参考書をボクは問題集をもらった。
同期の家を辞して後、先輩が僕に言った。

「お前、あいつと親友だったんだから、これで勉強して。、いつか宅建取ってやれ。」


先輩はもらったばかりの参考書もボクに押し付けた。

「いやですよ。俺、不動産に興味ないし、頭悪いし。ムリムリ。」

「いや、亡くなったあいつは同期の中じゃお前が一番頭いいと言ってた。すまんが、お前、いつでもいいから、それがあいつの供養だから、弔い合戦と思って、宅建取ってやってくれ。」


先輩は調子のいいことを言って、すべての責任をボクに負わせた。ボクは仕方なく勉強を始めた。

それでも、相変わらず、銀行のノルマやバカな勤務体系は変わらずボクらにのしかかってきた。あんまり、たびたび、不合格が続いて受験をあきらめた年もあった。合格まで年月がかかりすぎて同期の受験しようとしていた資格は「宅地建物取引主任者」から、「宅地建物取引士」と名称が変わった。

やっと合格した時にはボクは中年を過ぎていた。合格して間もなくボクは銀行を退職した。



  *預担=預金担保貸付
     預金を担保として拘束し貸し付ける融資方法
     融資は、預担に始まり、預担に終わるともいう。
     単純預担もあるが、預金者と借入人が異なる場合など権利関係が複雑になることもある。

     同期が預担は簡単と言ったのは手続きは単純だというほどの意味でした。

銀行の話②<手形詐欺>


世の中には、人を騙して金儲けを企む悪人がいる。

詐欺師の事だが、民法の考え方では「詐欺は騙される方にも落ち度がある」というのがある。民法が受験科目の資格試験である「宅地建物取引士試験」や「行政書士試験」にはよく出題される。

例えば、「脅迫」と「詐欺」によって不動産を第三者名義にされた時に被害者(元の持ち主)の権利をどう守るかというふうに出題される。この答えは「脅迫」の場合は全面的に被害者の権利が守られるが、「詐欺」の場合は「善意の第三者に対しては対抗できない」としている。

つまり「詐欺とは知らずに詐欺師や詐欺師から不動産を購入した者からさらに転売された人」の方が詐欺師に騙された人より気の毒だから守ってあげようという考え方だ。

権利がぶつかり合った時、より気の毒な方の味方をするというわけだ。詐欺師に騙されるあんたにも落ち度があるでしょうという考えだ。ボクはこの考え方には納得いかない部分があるが、それこそ専門家が幾星霜かかって築き上げた法理論だから、文句は言うまい。

ただし、詐欺師は悪党だ。絶対、罰せられるべきだ。

ボクの銀行勤務時代の話だが、若い頃、営業担当者として退職一時金を預金にお預かりしたことから贔屓になってくれたお客がいた。彼は、地方のマスコミに永年勤務した人だった。紳士で退職時には社内でも相当な地位にいた人だった。報道機関にいながら事件現場や取材活動の経験はなく、反面、企業のオーガナイザーとして辣腕を振るった人物だと後から知った。

その人が、所有する市内一等地の遊休不動産を売った。自宅は郊外にあった。不動産取引後、彼は土地売却代金を全額預金すると電話をしてきた。訪問してボクは奇異な感じがした。

土地代現金5000万円と、3通の約束手形、内訳は2000万円2通と1000万円1通。しかも、手形の期間は6ヶ月、9ヶ月、1ヶ年だ。聞けば買い手は市内不動産屋某で「金額が1億円なので半金半手にしてください」と言われてキャッシュ5000万円、手形5000万円を持ちかえったそうだ。

「半金半手」とは、半分を現金(振込)で、残り半分を手形で支払うという支払方法のことだ。

不動産取引で半金半手なんか聞いたことがない。半年から1年の手形なんか、詐欺師が土地を転売して逃亡するのに十分だ。ボクはすぐに弁護士さんに相談して手を打ちましょうと提案した。彼は6ヶ月様子を見ようと言った。それは甘いとボクは思ったが彼には思惑がありそうだった。

果たして6ヶ月後、2000万円の約束手形は無事落ちた。しかし、案の定、残りの2通はやはり不渡り手形で返却された。付箋の付いた手形を筆者に示し彼は言った。

 「私はあの土地は元々、5000万円以下の値打ちしかないと思っている。前の道は二項道路(建築基準法42条第2項に規定される狭い道の事。この道に面すると建築制限が付くので土地の価値は低い)だし、他の業者に聞いても5000万円はしないと言うことだった。 


彼は、一息ついて驚くべき事を言った。

 「実は、あの不動産屋の某は私の小中学校時分からの友人だった。彼が何故今回こんな手の込んだ事をしたのか、私には分からない。彼にどんなバックが付いていて彼にどんなメリットがあるのか興味もない。ただ、私は遊休土地の固定資産税を納めるのが面倒だったし、あいつ(不動産屋某)の役に立てばそれでいい」


ボクは違和感を覚えたものの、彼に被害者意識がない事が救いだった。
しかし、不動産屋某は2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分となる前にこの町から姿を消した。
行方は知れない。

不渡り理由は「資金不足」だった