つげ義春大全を読み返している。
1953年に描かれた手塚治虫先生の「罪と罰」、
ドストエフスキーの原作をコミカライズしたものだが
ラスコルニコフが金貸しの老婆の二階の部屋に上っていくシークエンスがある。
つげ義春大全の84ページの中段にこれとそっくりの絵が出てくる。
1956年に描かれたつげ義春さんの「奇人」だ。
主人公の青年が殺人を犯して金を奪うというシーンまで同じだ。
親友の漫画家に生前尋ねたことがあった。
「これって盗作とかパクリとか言われないだろうか?」
「貸本漫画の時代にはよくある話で別に目くじら立てる必要なかったんだろう。
手塚先生も『お互い様』っておおらかに言ってたし、、。」
そしてつげさんはこの作品をこれだけで終わらせなかった。
ドストエフスキーの原作と手塚治虫の漫画に対して一ひねり加え
「奇人」をありきたりのスリラー漫画で済ませなかった。
この作品を喜劇に変えてしまった。
オチは言わない。とたんにつまらなくなるから。
規制なし編集なし添削なし原稿買取の気ままな貸本漫画だから生まれた作品だ。