墓石の損壊や墓所への悪戯は刑法犯である。
墓荒らしにあったことを〇亀警察署交番に届けたが警察官は聞かぬふりをした。ところがボクが自力で犯人を突き止め墓所を原状回復工事させると、くだんの警官は根掘り葉掘り必死になって聞いて来た。

どういう仕組みになっているのか?不思議なので元警視庁捜査二課から田舎の警察署副所長で定年退職し今は上場企業に天下っている性格の悪い男に聞いてみた。彼が言うにはおそらくその警官は事件の届時点ではつまらないと自己判断し事件として取り上げずもみ消した。しかるに解決したとボクが電話したので事件を掘り返し解決報告を作り直したというのである。

警察はどこでも腐敗警官が多いらしいが特にこの〇亀警察署と言うのは不祥事件が多い。迷宮入りの殺人事件等数件あるし、警官の恐喝暴行事件、警官の詐欺事件、など多発している。何度かテレビのワイドショーでもつるし上げを食らっている。

警官の不祥事はともかく、我が家の墓荒らし事件は村役場の墓地担当者からの電話で謎が解ける。
シルバー人材センターの会員が墓掃除に来ていた時、一人の老人がうちの墓の辺りで佇んでいたというのである。シルバーの人が見ていたらしいから聞いてみるとよいと役人は言った。

シルバー人材センターへ電話するとセンター長と言う老人が電話に出たが、ボクが用件を話し出すと逆上して何も見ていない、何も知らん、うちは関係ないと喚きだす。これは犯人も犯行現場も見ている証である。かかわりになるのを恐れているようだった。

ボクはもう一度役人に電話をした。すると役人は意外なことを話し出した。
「昔、私のうちは徳田さんの長屋の東隣でした。私が子供の頃、徳田さんは中学生だったのを覚えています。それで墓荒らしの犯人なんですけどシルバーの人が見たというのも昔あの長屋に住んでいた人らしいです。でも私が犯行現場を見たわけではないので犯人と思われる人の名は言えないのです。」

何という役人根性、何という事なかれ主義、警察と言い、シルバーセンターと言い、村役場の役人と言いこの村の奴はとんでもないやつばかりだとボクは怒りを抑えながら、犯人の名を村役人から探った。

「私んちの長屋の東隣は矢沢さんでしたよね。すると西隣は河田さんですね。彼は今どこにすんでいるのかなあ。」
「私もよく知らないのですが愛媛県の松山市にいるようですね。」

それだけ聞けば十分であった。わたしはネットで松山市の電話帳を閲覧し河田姓を調べた。5軒だけだった。
私は順番に電話した。3件目で昔、〇亀に住んでいた河田と言う男が電話に出た。

この時点で私はこの老人が犯人と確信していた。村役場もシルバーセンターも最初から昔、我が家が住んでいた長屋の西隣の河田某が徳田家の墓荒らしの犯人と知っていてしらを切っていたのだ。


それで私も賭けに出た。決め打ちした。

「河田さん。お久しぶりです。昔、〇亀の七軒長屋の隣に住んでいた徳田の息子です。」

「ああ、ご無沙汰しています。聖子ちゃんの弟さんかいな?ところでどうしたん?」

「こないだうちの墓に造花を備えてくれて墓の前をセメントで固めてきれいにしてくれていたでしょう。ありがとうございます。だけど、役場と警察から連絡があってあの墓所は村営墓地なんで勝手に手を加えると墓地の損壊と言う刑法違反になるらしいです。それに余ったセメントを他所の墓地の前の空き地に放置していたので徳田の仕業やろうと他から怒鳴り込まれて往生しとるんですわ。」

「いやあ。それはすまんかった。わしは草が生えてたから、よかれと思ってコンクリで固めたんやが、申し訳ない。明日中に元通りにしておくけん。」


それで事件は一気に解決した。河田と言う老人は当時高校生で、母子家庭。ボクの父が野球や水泳に連れて行ってよく懐いていた。テレビがなくて金曜日にはプロレス見せてとよくやって来た。ボクより三歳くらい上だがボクとはそれほど親しくなかった。姉とは同級生で小さい頃はよく遊んでいた。姉は聖子でボクは徳太と言うのが名前なので、二人合わせて聖徳太子と最初に言い出したのはこの河田の息子であった。


聞けば河田は昔世話になった徳田の親父さんの墓に雑草が生えていたのでセメントで固めて造花を生けたのだった。好意からやったことだとしても本人に伝えずやればそれは墓荒らしと言う犯罪になり罰金や懲役刑を受けることになる。

今は松山に住んでいるが高速道路に乗って月に一回は河田家の墓掃除に帰ってくるという。その時徳田家の墓を見かけて今回の行為に及んだというものである。大きなお世話だし他人の気持ちを考えない愚かな行為だ。


すったもんだあったがその後、ボクも年なので徳田家の墓は墓じまいをして墓地は村役場に返還した。
父母祖父母のお骨は閉眼開眼供養をしてもらってボクの住む町で永代供養してもらっている。