あれから三年。親友の漫画家が逝ってから三年たちました。
2021年4月11日。友が亡くなった。
その数日前に入院中と聞いていた彼に対して、ふざけたメールを打ったところでした。



【私から親友へのメール】
4月5日俺の誕生日だけど、何も誕生日プレゼントはいらないから。
酒とか骨董品とか洋服とか、売るほどあるからお気遣いなく。ウソだけど。
お互い長生きしようぜ。


返信はなかったけれど、4月11日に彼の奥さんから主人が他界したとの知らせと生前は世話になったとの丁寧なお礼があった。夫が亡くなった日に気丈な女性だ。生前から相当の覚悟があったのだろう。



後に彼の最後の言葉は奥さんからメールで送られてきた。



【親友から私への最後のメール】
昨年末は大晦日まで入院していました。新規の抗癌剤治療に対応するための一泊の処置入院の予定が、私の体調の悪化で、一週間も延びてしまったのです。
体調は最悪です。あ、もうダメかも…と思うことが度々になってきました。こうやって人は死を迎えるんだなぁ…などとぼんやり考えます。


病状について医者からは説明されていません。普通なら「延命処置に移行しますか?」なんて訊かれる頃なのでは…と思うのですが。さて、私の命はあとどのくらい持つのでしょうか?
明日からは入院してまた新しい抗癌剤治療です。まだ助かる可能性があるのかな? そうとは思えませんが、信じるしかありません。私のために頑張ってくれている人達がいるのに、私が諦めてはいけないと…。
支えてくれている人達には本当に感謝しかありません。その気持ちに少しでも応えられるように、まだまだ諦めずに踏ん張ります。


それにしても痛いです。モルヒネが効かなくなっています。1ヶ月前の6倍の量を飲んでいるのに、最早その量では苦痛を抑え切れません。


もうダメかな…。そんな言葉が何度も頭を過りました。本能みたいなものでしょうか。
もう少しで返メも打てなくなるような気がします。メールを読むこともできなくなると…。
もちろん自分としては回復を願っています。「ごめん。死に損なっちゃった」というメールが打てることを心底願っています。
でも、ここで何らかのメッセージを残しておかないと、このままお別れになってしまうかも…という不安があるのです。ごめんなさい。そうなることは嫌です。あまりにも不義理でしょう。
だから、区切りとしての私なりのお礼の言葉を御大に残しておきます。


御大、ずっとありがとう。
一緒に長生きの約束は果たせませんでした。申し訳ありません。




こちらこそありがとう。
あの日から、親友が逝った日から三年経つ。
私はまた同じ言葉を呟いている。




二年経った頃、親友の奥さんから娘に女の子が生まれたと知らせていただきました。
彼は生前、孫は諦めたといっていましたが、舞台女優をしていた彼の御長女が結婚して、彼は晴れてお爺ちゃんになれたのでした。